着物の仕立てと仕立て直し伊藤和裁

裾引きの仕立て

着物お仕立て事例 - 三度目の正直のお引き摺り


一度ならず二度までも、きちんと仕立てをして貰えなかった振袖、仕立てをしている者としては少し可愛そうな着物です。大好きなおばあちゃんに成人式にプレゼントして貰った振袖、この子をキッチリとお引き摺りにして、ちゃんと結婚披露宴で仕事をして貰いました。
電話でお問い合わせ頂きました。『ネットで調べて他の仕立て屋さんで振袖の裾引きの仕立てを頼んだのですが、裾に綿を入らずに仕立て上ってきました。そちらで仕立て直してをお願いできますか?』と訳ありのお問い合わせです。
大阪吹田市のお客様です。私共の処にそのお引きを持って来て頂きました。
見てみますと宝尽くしの素晴らしい立派な振袖、白い比翼が付けただけで裾に綿の入っていない状態でした。いろいろと話しを伺い、着物を見させてもらい、お引きの寸法とお客様のサイズなど割り出してみますと振袖の着丈がやけに短いことに気付きました。お客様にたずねると、実はこの振袖、二十歳の成人式にも、着丈寸法を間違って仕立てられていました。
えっ!(絶句)、なん と、、、かわいそうに、、、(泣)
おばあちゃんに買って貰った大事な振袖を今度こそ、ちゃんと仕立てをして、お披露目して貰いたく思いました。
仕立てについてですが、最初から着丈がぜんぜん短いわけですから、内揚げも少ないですが、これも利用し、八掛けを下げて裾のふきに綿を入れる分、胴裏を足して、長くなるように工夫をし、身丈を出せるだけ出しました。おくみの上の縫い代も調べ、衿下をもう少し長くしたかったのですが、おくみの衿に隠れると ころが無地だったので、これも使い一杯に出しました。この子がりっぱに仕事が出来る様にと、生地が足らなくて、着物を長くするのも大変だったのですが、あらゆる知恵は出して、比翼の裾、袖口にも綿を入れて、引き摺るときの具合も考慮して、少しでも豪華にして、お客様に着用して頂きたく仕立てました。
11月10日にご来店頂き、結婚式まで時間が全然ないのに、普通の白色の比翼地をおめでたい赤色に染め直しして、振袖の身丈を仕立て直し、八掛けと比翼に綿を入れて、伊藤和裁、こだわりのお引きずりにしました。12月20日の納期に私共の処に取りに来られ、大変喜んで頂き、このお引きを大事に抱きしめて持って帰られました。

←前の事例次の事例→