着物の仕立てと仕立て直し伊藤和裁

着物の仕立て

本加賀友禅『連翹(レンギョウ)』の訪問着


加賀友禅染めは、簡素で染め色だけで着物を表現します。
『何も足さない。何も引かない。』、染めの色彩感覚と筆遣いで逸品を作り上げます。
京友禅染めの多様な装飾を使って表現する煌びやかさとは対照的です。

今回の訪問着は、連翹(レンギョウ)の花の着物です。
四月から五月に咲く満開の大和連翹(ヤマトレンギョウ)、それをまずは、花や幹をデッサンし、それに従って着物全体に配し作成します。連翹を使って縦縞模様に表現しています。見事な美しさを染めと筆遣いだけで見事に表現しています。
この訪問着を身にまとうと上前に満開の連翹をボカシ染めで表現して、下前とは対照的に上前の柄を引き立てています。着装するのも、鑑賞するにも、感動を与える美しさです。図案の考案中に苦心なされたのではないでしょうか。心血を注いだ、素晴らしい逸品です。今まで、培ってきた知恵と経験を活かし、現代に相応しい知性溢れる加賀友禅染めです。

今回の仕立てについてですが、縦縞模様のように連翹の花々、上前身頃を強調するボカシ染めの訪問着です。
総柄の訪問着ですが、柄合わせは少なく、八掛けと衽八掛けに柄合わせがある見栄えのする訪問着でした。

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