着物の仕立てと仕立て直し伊藤和裁

羽織り

花心(ハナゴコロ)豊かな羽織


『桜の枝丸(サクラノエダマル)』
『梅の枝丸(ウメノエダマル)』
『竹に枝丸(タケニエダマル)』
『紅葉(モミジ)に枝丸(モミジニエダマル)』
『葵の蔓丸(アオイノツルマル)』
『菊に蔓丸(キクノツルマル)』
これらの草花の呼び名は、今回仕立てた羽織にデザインされている草花の呼び名です。日本人が草花への暖かい思いやりが感じられる言葉です。
今回の草花を花心(ハナゴコロ)と題名に表示してみました。

『着物姿は、日本人を最も美しく表現し、着物姿を見る世界中の人々の心を豊かにしてくれます。』
北風に冬の気配が感じられるようになるとはおるものが恋しくなります。

小春日和に映えるお洒落な羽織を仕立て直しました。
縮緬地(チリメンジ)に美しい藤紫色、直径が23センチほどある、たいへん、大きな花丸文様(竹に枝丸・桜に枝丸・梅に枝丸・紅葉に枝丸・葵に蔓丸・菊に蔓丸など)を友禅染めで表現し、羽織全体にバランス良く配した素晴らしい羽織です。
羽織全体から、洒落味が発散されるような、女性らしい淡い藤紫色の染めと優雅な模様の凝ったデザインが特徴の素敵な羽織になりました。

おばあちゃまの箪笥(タンス)の中に大切にしまわれていました。
昭和の作品です。クラシカルな上質感の魅力を私は感じました。

羽織丈は、二尺七寸(約100センチ)あります。模様の花の丸は、草花を円形に収めた文様で、あらゆる草花を文様化することができます。優雅な古典文様で、紋のデザインにも使われたりもします。その雅なデザインは、今、現代にも何の遜色(ソンショク)も無く通用する美しさです。

仕立てについてですが、羽織丈は、後身頃の裾で花文様が切れないように配慮しています。着用時、羽織紐(ハオリヒモ)が帯の中心辺りに来る様に乳付けの位置を決めました。着物の上から、はおる物なので着物の袖が出ない様に裄を着物より2~3分、長く仕立てています。羽織の衿の裾が着用時に反り返ってこない様にスッキリと収まる様に仕上げるのは、かなりの技術が必要でなかなか難しいです。

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