着物の仕立てと仕立て直し伊藤和裁

羽織り

軽やかな春の装いの長羽織


暖かく、そして、輝きを増した陽光に誘われて、春はもうそこまで来ています。草花たちの芽吹いた色目や開花した花の香りに春の気配が感じられるようになると、着物ファンは春色の羽織でお出かけしたくなります。

今回仕立てた羽織は、見た目にはかなり控え目なデザインです。
と言うのも、元は付下げ着物だったので、絵羽付け自体そもそも羽織の柄付けではありません。縞目も控え目な紋意匠ちりめんの疋田絞りの白色地に、上品な形と大きさの野菊・花菖蒲・藤の花・を刺繍で象り(カタドリ)、花籠と松葉などを金彩加工で型押しで模様にした物です。
疋田の絞りとそこに刺繍を金彩加工で施された野菊と花籠が、春の風情を可愛らしく表現したお洒落な羽織になりました。
おしゃれな羽織とは、着物にハオってもフォーマル感を感じない羽織の事を言います。小紋や紬に合わせて、食事や観劇、お買い物など。普段のお出かけに気軽に装えます。派手になった着物なども、地味目の羽織を合わせると装いを落ち着かせる効果もあります。

次に仕立てについてですが、今回は、最初に言ったように総絞りの付下げ着物だった物を長羽織に仕立て直しました。付下げ着物の時の柄行き、そのままに仕立てをすると後ろ身頃に柄が少なくなる為、元の前身頃を後ろ身頃にして、少しでも後ろ身頃の柄が多くなるように工夫しています。身幅も少し福与かな為、マチを広くして、仕立てさせていただきました。

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