着物の仕立てと仕立て直し伊藤和裁

仕立て直し

思い入れのある振袖の仕立て直し


11月に私どもの店に振袖を持って来られました。
注文内容は、着物クリーニング、袖口のシミを取って肩巾と袖口の元スジをスジ消し、裄丈のサイズを長くし、身巾のサイズを狭くして、娘さまに来年の成人式に着用させたい。そして成人式に間に合わせてほしい。とのご希望です。お母様が二十歳の成人式に着用したのか??昭和の振袖です。
早春を思わす桜色の地色。両袖底、裾廻りには紺色の濃淡と金銀プラチナの蒔き散らしの金彩加工が施されたボカシ染め 桜・梅・躑躅(ツツジ)・椿・牡丹(ボタン)・尾長鳥(右袖の牡丹に)が描かれている総模様の型染め友禅の振袖です。
今回の振袖は大変珍しく、衿と衽、袖口布と振り布、八掛けに比翼の付いた振袖です。プラス衿には胸元が豪華になり、顔が引き立つ振袖の色との色を合わせた化粧衿も付いています。
仕立て直しについてですが、裏地の八掛けと胴裏はそのまま使います。振袖の身巾直しをすれば、比翼の身巾も直します。(別に長襦袢もお預かりしています。こちらも仕立て直しました。)
直す部分は着物全体の大半を占めます。裄直しも肩巾も袖口もスジ消しをするので、全て解いてスジ消しをした方が綺麗に仕立て上がります。それに衿にも古いシミがあり、染み抜きでは取れないので、衿の汚れていない部分を利用工夫(衿の柄位置も考慮しています。)して直す衿付け替えなどもできるので、全ての事(仕上がり具合、仕立て易さ、料金の事、裏地の八掛けと胴裏はそのまま使う事もです。)を考えて、一から仕立て直し事になりました。お母様やお知り合いの方から譲り受けた物は、どんな物でも思い出の詰まった大切な宝物です。新しい物は思い入れのある物には勝てません。

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